ファントムも幕開きから一週間が過ぎ、プレビューの頃に比べてかなり落ち着いてきました。この落ち着くという言葉。決して熱が冷めているという意味ではないのでご注意。稽古場から劇場に移って間もない頃というのは、袖中の状況や照明などが加わりそれらに対応していかなければならないために、ある意味様々なことに意識を向けての公演になる訳です。それが逆にいい意味で舞台上の緊張感に繋がったりもするので、初日から間もない頃が見所、と捉える方もいます。今は公演期間の中腹にさしかかり、そういった舞台機構への対応が身体に染みついて、無意識にできてくる時期な訳です。そういう意味で、落ち着く、という表現を僕らは使います。この時期になると純粋な意味で役、ひいては作品に臨めるようになります。そこから楽日に向けてまた進化して行く、という訳です。
観る方によって、初日が好きな人もいれば落ち着いた頃が好きな人もいますし、楽日が絶対観たいという方もいます。そういった観る方による好みの違いは、同じ作品を上演していながらも時期によって、微細に変化していることに由来するものと僕ば捉えています。あくまで僕の主観ですけど(笑)。で、なんの話でしたっけ?
あぁ、公演が始まって一週間たったってことでしたね。その一言の解説どんだけしてんねん俺。まあいいか。
そろそろタイトルの方に話をシフト。今回のタイトル「スプリンター」は、僕が今回演じている役、というか、演じる上での僕の心意気を一言で表現したものです。今回僕ば、原作で言うところのエリックの章に登場するジャベールという人物を演じています。既にファントムをご覧下さったお客様や、原作を読まれた方は御存知と思いますが、今回の作品は主人公エリックの成長を描いているので、彼の成長とともに周囲の人物もメンバーチェンジしていく訳です。エリックの章にしか登場しないジャベールですが、その分とにかく濃厚にエリックと関係していきます。勿論他にも様々な人物が登場しますが、演じている僕の感覚としては、初登場から章の終了まで完全にノンストップ。しかも全てが対エリックという言うなれば一騎討ち状態。それだけでもかなりのドキドキなのに、一騎討ちの相手は大先輩の林さん。役としては対等以上、むしろ優位に立ってなくてはならないのに、林さんの演じるエリックの尋常ではないエネルギーに、僕なんかは一瞬でも気を抜こうものならバッサリです
。だから、仕草の一つ一つ、台詞の一字一句全てに全エネルギーを注いで演じています。そこまでしないと一騎討ち以前に勝負にもならないんです。まさに命がけ。だからエリックの章がスタートしてから終わるまで完全に全力疾走。スプリントだなこれ、という訳です。だからダブルキャストの堀川とも「俺たちスプリンターだな(笑)」なんて話したりします。厳密にはマドレーヌの章からタスキを受けてジョバンニの章に託す、リレーかな。マドレーヌの章でみんなが創り上げたファントムの世界を引き継いで、ジョバンニの章のみんなに最高の形でたすきを渡したい。そんな風に思って僕は毎日走っています。毎日自己ベスト更新目指して。
明日も最高の走りができますように。
追伸。終演後、僕の楽屋ではJr.7の大沼、関戸、松本が毎日必ず筋トレしている。「どんだけタフなんだ(笑)」とツッコむと、「筋トレは別腹です。デザートですよ」と松本。あんたらがバケモンだわ(笑)